腹痛ふたたび
高校生だった頃、眠っていたぼくに突如腹痛が襲った。呼吸が出来なくなるくらいの途轍もない痛みだった。なんとかベッドから這い出て、母親に病院に連れて行ってもらった。眉間にしわを強く寄せ、滝のように汗を流し、胎児のように丸まるぼく。
痛みは何故か病院に着くと消えたが、一応看てもらった。原因がわからないと言われ、もしかすると痛みがまたやってくるかもしれませんので注意してくださいね、との脅しを受けた。ぶら下がる蛍光灯と緑色の床とたくさんの医療機器のなかで。さっきの痛みから解放されたぼくには、ほとんどどうでもいいものだった。
痛みは「左脇腹の中をもの凄い力で握り潰されている」ような感じだった。ぼくが力を抜けばぺしゃんこになってしまいそうな、そんな感じ。お腹を下す時の痛みとは全くの別物だった。
そして一昨日、11年振りにその痛みがやってきた。「もしかすると痛みがまたやってくるかもしれませんので注意してくださいね」
同じような痛み。呼吸が出来ないくらい。立っていられない。ベッドに横になった。力を抜くとぺしゃんこになってしまいそう。
11年前とは違って痛みはどんどん酷くなっていって、意識がゆっくりと薄くなっていくのがわかった。薄れ行く意識のなかで「あぁこれは死ぬのか」「死にたくないなぁ」と思った。その内に思いもなくなった。ぼくはひとりで丸くなっていた。
そのまま数十分ぼわんぼわんしているといつの間にか痛みは去っていた。ぼくは死ななかった。また気紛れな痛みに遊ばれてしまった。
「もしかすると痛みがまたやってくるかもしれませんので注意してくださいね」
次はいつだ?